#1007 薬を本当に必要としている人のために働く!

今日は、いつもとは違って、薬を創るということに関して書いてみます。
今日は会社の私的な勉強会で、希少疾患に製薬会社がどのように取り組むべきかについて話し合いました。希少疾患とは患者数が非常に少ない難病(難治性疾患)です。この希少疾患は 6000 疾患以上有ることが分かっているとのことですが、その多くのでは未だに有効な治療方法が存在していないとのことです。
しかしながら、このような疾患に対して新薬の創出はあまり進んではいません。というのは新薬の開発には莫大なコストのかかるため、一般的にこのような患者数が少ない疾患に対しては、薬の開発はビジネスとして成立するのが困難であると考えられています(もちろん Genzyme 社 のように成功している会社もありますが)。国からの各種の公的なサポートも存在していますが、それでも薬の開発があまり進んでいないことは現実だと思います。
製薬会社での仕事は人の命に関わる大切な仕事で、自分自身とてもやり甲斐を感じます。ですが、自分は製薬会社の研究者であると同時に会社員でもあり、会社の利益に繋がる活動をしていかなければなりません。ビジネスとして成立しない領域にはなかなか入っていけないという現実には矛盾を感じます。
他にも例えば、新興国では薬を必要とする多くの人がいるのが現実ですが、保険制度の不備や貧困により薬代を払えないなどから、新興国での医薬品アクセスはビジネスとして成立しにくいことも現実です。
製薬会社のリソースにはもちろん限りがあり、全ての地域の全ての人が苦しむ全ての疾患にアプローチ出来ないことは残念ながら仕方がないことだと思います。また企業にはその企業に特有の強みやミッションがあり、どんな問題にもアプローチ出来るわけではありません。そのため何にリソースを注ぎ込んでいくべきかは経営上の重要な判断でもあるため、自分のような一研究者が何とかできる事ではありません。
ですが、本当に自分が何のために働くべきかのかは継続して考えていきたいと思います。特に、希少疾患や新興国での医薬品アクセス、またはそれ以外にも、薬を必要とする人が沢山の人がいるということを忘れずに、社会的な課題を問題意識として持ち続けていたいと思います。
マイケル・ポーター教授らが提唱した CSV (creating shared value、共通価値の創造) の概念の通り、ビジネスを通じて社会的な課題に取り組んでいくことももちろん出来るはずです。現状の会社の枠組みでは、このような動きはまだ困難なのですが、待っていれば新しい枠組みを与えてもらえるなんて決してあり得ないと思います。一人の研究者の情熱で既存の枠組みを崩していくくらいの事を考えないといけないと思います。本当にやりたいなら、それをトコトンやってみるというのも良いのではないかと感じます。
今日の勉強会ではボケ~っと、そんなことを考えていました。

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