専門外からの『そもそも』でイノベーションを #1282

昨日、違う部署のとても優秀な後輩と議論をする機会がありました。(自分のしゃべり方は偉そうだったかもしれませんが汗)後輩よりも自分の方がエライわけでは決してなく、単に専門性が近いとか、そういう考え方に慣れているから、という理由だけで議論の相手役を仰せつかったわけです。

自分がしゃべっていることは自分の専門分野に加えて、ドラッカーの教えやセミナー等で習ったことをそのまま喋っているだけなので、言っていることは大きくは間違ってはいないという自信はありました。議論の前半は説明を聞いてくれていた後輩ですが、しかし後半になると的確に自分の議論の矛盾をついてきます。その点に関して自分も修正をしていくのですが、自分が答えに窮するところも多々ありました。その際に生じる思考の負荷がにより、自分の考え方が少し洗練され(少なくとも論理矛盾は少なくなりました)、喋りながら考えついたアイデアは当初の自分の考えよりも大きく前に進んだ説明になったと思っています。

さらに議論が進むにつれて、議論の内容を自分たちの仕事に落とし込もうと盛り上がったのですが、その際にもこの後輩からの指摘が大変に役に立ちました。自分は現場から少し離れているために『ベキ論』を中心にしゃべりがちでした。しかしそんな自分とは異なり、現場の視点から鋭い質問を数多く投げかけてくれ、その結果アイデアはこれまでにはない面白い発想である一方で、同時に現実に則したものになったと思います。もしも自分一人で考えたら、ベキ論だけを強調した、ありきたりのつまらないアイデアに着地していたと思います。

このような事例を通じて感じるのは、やっぱり頭の切れる方と話すのは楽しいなということ、人に説明することを通じて自分の理解が大きく進むこと、さらに質の高い質問により思考が洗練されることを感じます。今回は特に三つ目の質の高い質問の有効性を感じました。自分とは専門性の異なる後輩は『そもそもその前提は正しいのですか』とか『それが出来ない理由は何なのでしょうか』など、本質をつく質問や前提の正しさを問う鋭い質問をしてきます。それにより、自分のパラダイムの枠組みが一旦取り払われることで、盲点に気付ことができます。自分にとっての盲点はおそらく同業他社のライバルにとっても同じ盲点である可能性は高く、それに気付けたことは競争相手に対して優位に働くポイントを見つけることができた可能性があります。

自分が前提として当たり前に考えていることに対して、わざわざ『この前提は正しいのか?』と自ら問うことは簡単では無いように思います。ただ一方でこれが出来ないと、論理的な結論だけではありきたりのものになりがちで、他者に対して競争力のあるアイデアを出しにくくなると思います。よく言われていることではあるのですが、前提を疑いやすい環境を生み出せる意味でも専門性の境界にこそイノベーションが落ちているように思います。みんな忙しいので誰も自分の話なんて聞いている暇は無いのでしょうが、なんとか今日のような機会をたくさん持って、予期せぬイノベーションを発見していきたいと思います。


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