創薬研究で専門性をどう生かしているか #1366

最近、自分の専門分野外の方とお会いしてお話させていただくことが多いので、その練習として (笑)、自分の仕事の紹介を書いておきます。

自分は有機低分子薬の創薬研究に携わっていますが、特に薬の種を探す探索研究という部門で生化学者として働いています。中でも酵素学という分野を専門にしていて、薬の種になる有機低分子化合物が病気の原因となる酵素に対して、どのように結合しているのかを『定量的に』評価することを仕事にしています。具体的には、評価系(実験系)の構築、化合物の結合様式の精査、結合の速度論解析などの研究を通じて、化合物間の優先順位付け、他社の開発品との差別化、などを通じて新薬の創出に貢献しています。

と、専門外の方にはご説明をさせていただくのですが、研究者という職種であることを考えると、『?』という事になってしまうのも仕方がありません。そんな分かったような分からんような説明だけではなく、今日はご興味のある方に向けて少しだけ専門分野を深くご紹介させていただこうと思います。

酵素阻害薬の探索研究においては、阻害剤の強弱を、目的の酵素の阻害活性を通じて評価することが一般的です。薬物非存在下での酵素活性に対して、ある濃度の薬物存在下では酵素活性が減弱します。この各種薬物濃度での酵素の残存活性を、薬物濃度に対して表示することで、その阻害剤の阻害活性の強弱を判定していきます。つまり、強い阻害剤は低濃度でも阻害活性を示すのに対し、弱い阻害剤は高濃度を添加しても阻害活性を示しません。なるべく低濃度で強い阻害活性を示す阻害剤を探索するべく、阻害剤評価を実施しています。

というところまでであれば、生化学者でなくても感覚的に理解できるのでしょうが、実はここには一般には分かり難い専門家のこだわりがたくさん存在しています。たとえば、自分たちの酵素評価系において、二倍活性が強くなった時に、高次評価系(細胞評価系、動物評価系さらにはヒトでの病体において)同じように二倍活性が強くなっているか(線形性と外挿性)を担保するためには、評価系構築の際に押さえるべき多くのポイントが存在します。さらに評価系の問題ではなくても、阻害剤が強くなるにつれて、評価系構築の際に仮定した前提が満たされなくなってきます。そうなると正しい評価ができなくなってくるため、まずそのことに気付き、さらにその際にはどのような代替の評価を行うかを提示する必要があります。

『じゃあ、それってどうやるの?』みたいな話が実は大切なのですが、相当長くなりそうなのでもう止めます。こういう話を、社内のセミナーや社外の勉強会でお話させていただく事が最近増えてきました。このような自分にとっての当たり前の内容を専門外の方にお伝えすることは、いつもとは異なる知的負荷になり、大変にためになります。今後もセミナーなどの依頼があれば、積極的に引き受けていきたいと思います!


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