Marginal gainsという考え方

サイクルロードレース(自転車)が今年も盛り上がっています。もうすぐツール・ド・フランスが始まり、今年も熱い戦いが見れそうで今からワクワクしています。ここ二年はコロナの影響もあり、色々とゴタゴタもあったのですが、やっと以前の状況に戻ってきたなと感じることができ、少し嬉しく思います(最近ではヨーロッパのレースを見ていても観客の皆さんは誰もマスクをしていないようですね)。

さて、サイクルロードレースで思い出したのですが、自分に大きな影響を与えたのが チーム・イネオスの『Marginal gains』という考え方(哲学)です。これは、現チーム・イネオスの GM である Sir デイビッド・ブレイルスフォード氏がチームに持ち込んだ考え方です。それまで決して強豪とは言えないチームでしたが、氏が加わったイギリスの自転車競技チームはオリンピックで数々の金メダルを、そしてチームスカイ(現イネオス)ではツール・ド・フランスを含むグランツールで数々の栄冠を手にしました。チームは文字通り輝かしい成果を収めた功績で氏は Sir の称号を授与されたことからも、その業績のインパクトがうかがい知れます。

この『Marginal gains』とは直訳すると、僅かな前進、些細なことの積み重ねによる進歩、などが当てはまるでしょうか。とにかく、あらゆる面で改善の機会を探すのですが、この時点で完璧を目指そうとしないで、1歩ずつ前進することに努め、それらを総合して改善するそうです。例えば、トレーニングプログラムに始まり、空力(風の抵抗)や機材の軽量化などの科学的な面はもちろんのこと、レース期間中の体調管理(チーム外との接触禁止)、食事・睡眠などを含む選手のコンディション管理など、本当にありとあらゆる面でごく僅かでも(1%でも)改善を目指すそうです。

あるレースの実況の中で、チームはある化学処理を自転車のチェーンに施すことで、抵抗が1%減ったがそれによりコストが10倍増加したことに対し、『消耗品のチェーンに、そこまでやる価値があるんですかね』と実況者がコメントしていましたが、解説者によると『それが Marginal gains』の哲学です』とのやり取りがありました。チェーンの改善はそれ単独では目に見える成果には至らないかもしれないけど、チームはこのような取り組みを、それこそありとあらゆる場面で行っているから、結果としてそれが目に見える差になって現れてくる、と。って思って見てみると、日本語の解説では『マージナルゲイン』と言われていましたが、単数形 gain ではなく、gains って複数形なのは納得です。

人も組織も成果を出そうとすると、大きな改善により短期間に楽に成果を求めたがります。もちろん最初は波及効果の大きな楽なところから潰していくという効率も大切な考え方です。しかし、そのような目に見える楽な方法があるのであれば、既にそれは他所でも同じようにやられているということは容易に想像がつきます。他所がおろそかにしがちな些細な(marginalな)ことだからこそ、取り組めば差別化のチャンスがあり、そしてその僅かが差を成果として見えるほどまでありとあらゆることを積み重ねた時点では『微差が絶対差』となっており他者に逆転不可能になっているのだと思います。自分の成長について考えてみたとき、日々の成長は決して目に見えるものではなく、本当に1%、もしくはそれ以下なのかもしれません。ですが、自分もその小さな改善の機会を愚かにせず、ありとあらゆる改善の積み重ねで勝負するんだという長期的視点・多角的視点を持って、取り組んでいきたいと思います。

って、話を若い人に熱弁したんですが、サイクルロードレースの具体例がイマイチ伝わらなかったみたいか、全然刺さらず、超スベりました(笑)。残念だったので、ここで書いておきたいと思います。なお、Marginal gains についてのハーバードビジネスレビューの記事があったので、以下に貼っておきます。

最初から完璧さを追求しない、「1%の改善」が金メダルにつながる


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