昨日、~未来を創る若者たちへ~の講演動画についてブログに書きました。孫正義さん、京都大学 iPS 研究所の山中伸弥先生、東大総長の五神真先生、将棋の羽生善治さんの非常に豪華な対談です。その中でそれぞれのパネリストの方が、現在の専門を決められた瞬間について振り返ってお話されている点がとても印象的でした。あるきっかけ、例えば実験の成功や失敗、また将棋におけるある勝利や敗北、によってその先の進んでいく道が決まっていくわけですが、お話を聞いていて面白かったのは、その際に脳が興奮し、その快感をもう一度味わいたいと仰られている点でした。
特に研究者の場合、殆どの実験は失敗する訳です。というのは、未知の世界に足を踏み入れるのが研究だからです。世の中で誰もやっていないこと、いまだ証明されていないことに対して仮説を立て、それを証明するために実験を組み立てるわけです。そりゃー失敗が多いに決まってます。逆に失敗が少ない人はもしかしたら挑戦をしていない(=科学に対する貢献の少ない)実験テーマなのかもしれないですね。
そんな山程の失敗のなかでも研究を続けていられるのは、先に書いた脳の興奮をもう一度味わいたいと思ったから、なのだと思います。一つ山中先生が仰られていた点で興味深かったのは、初めての実験で予想された結果とは全く真逆の結果が出た際に、非常に興奮し面白いと感じられたとのことですが、その際に指導教官の先生も一緒になって興奮を共有してくれたそうです。この予想外の結果(予期せぬ失敗)に興奮する姿勢はとても大切だと思います。というのは、それがイノベーションの種になりうるからです。仮説を再構築する必要があるような予想外の結果は、それこそ人智を超えた神秘に迫るきっかけになりうるのだと思います。
しかし、このような予想外の結果が起こった時の態度は人により大きく異なるのかもしれません。指導者としては自分が想定する結果と違う結果になったのだから、もしかしたら怒り出す場合もあるのかもしれません。しかし予想外の結果を肯定し、その結果に一緒になって興奮してくださる指導教官の先生がいらっしゃれば、実験者としても予想外の結果をためらいなく肯定することができます。現場で生まれる驚きや発見といった感情の動き・脳の快感を、素直に肯定しててくれる仲間や上司の存在はイノベーションを生み出す組織を作る上で、大きな存在になるのではないかと思います。
でも、これって特に研究者以外にも当てはまることなのかもしれません(その頻度は別にして)。いま、プロジェクトマネジメントの仕事をしていても予想外の問題に、ほぼ毎日のように出会います。問題が起きるという事実は一つでも、それに対する反応の仕方は無数にあります。そんな場面では、もっと興味や驚き、興奮を感じてもよいのかもしれないと思いました。またもし同僚がそのような感情の動きを感じていたら、それを受け止め寄り添える存在でありたいと思います。いい意味で感情を押さえつけることなく感情の変化を楽しみながら、また明日から仕事を頑張っていきたいと思います!