新規技術導入によるイノベーション #1289

製薬会社で研究者として働いていることから、新しい技術に触れる機会がたくさんあります。アカデミア(大学)やベンチャーまたはライバルである製薬会社からも、新しい技術が日々報告されています。新しい技術や考え方は現状の課題を解決してくれることがあるため皆が注目しており、自分の部署でも予算編成の時期になると『あの技術を導入すべきだ』とか『新しい測定機器を買いたい』とか、そんな声があちこちから聞こえてきます。

ライフサイエンスの世界は変化が非常に早いため、全ての技術を自社開発に頼っていると時間がかかってしまい、すぐに時代遅れになってしまします。だから上記の通り、お金で時間を買う目的で社外から技術を導入するということに対しては否定しませんし、むしろ自分も新規技術を積極的に物色している方だと思います。とはいえ、リソースには限りがあり、何でもかんでも導入できる訳ではないため、何かを導入するということは他の何かを切り捨てているということを理解して、何を導入すべきかを冷静に考えないといけません。

この時に理解しておきたいことは、『その技術は既に公知になっている(ことがほどんどである)』ということです。全世界がインターネットでつながり、多くの情報が一瞬でやりとりされる今の時代は、自分たちだけがその情報を持っているということは極めて稀です(というかあり得ない)。自分たちのライバル企業(特に規模で勝るメガファーマ)も同じ情報を持っているとするなら、資金力でまさる彼らに勝ってその新規技術をイノベーションにつなげるには、どうしたらよいかを考えるべきだと思います(しばしばその議論が抜けがちなので)。

自分たちにどんな強みがあるのか?スピードでしょうか?だといいのですが、意思決定に時間のかかる日本企業(少なくともウチの部署)ではこれは難しそうです・・・。じゃあ他には?今ぱっと思いつくのは二つあって、(1) その技術を本来意図されて開発されたのとは違う(ライバルの気付いていない)目的に使って大きな価値が出せる、とか、(2) ライバルが持っていない自社独自の資源・強みと組み合わせて大きな価値を出せる、みたいな考えがあるんじゃないでしょうか。

まあ、当たり前の事を書いていますが、要は自分達より規模で勝るライバルと同じことをやっていちゃだめで、何か一つでも二つでもアイデアをひねって価値が出せるかどうか、さらにそこに参入障壁を築けるかどうかが重要なのではないかと思います。(自分が一番気をつけないといけないのですが汗)新しい技術を見るとつい飛びつてしまいがちですが、常に自分たちと同じくらい(いや、それ以上に)優秀なライバルと競争していることを忘れてはいけません。技術導入の目的は自分たちが絶対的尺度で進歩することではなく、ライバルとの比較相対としての競争に打ち勝ち、一日でも早く優れた価値を持つ医薬品を患者さんに届けることです。そこを忘れないようにしないとな、と思っています。


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